出版部門 Publishing
05/29 2026
森岡書店『KIJIMA TAKASHI, NEW YORK, 1960』展

65年前にプリントされたオリジナルプリントをぜひ見に来てください。
『KIJIMA TAKASHI, NEW YORK, 1960』
植田正治に師事し、土門拳に認められた写真家・杵島隆
1960年の ニューヨークを撮影した作品が66年の時を経て初の写真集化
日本写真史を代表する二人の巨匠との接点を持ちながら、
そのどちらにも収まりきらない独自の道を歩んだ写真家・杵島隆。
広告写真の革新者として知られていた39 歳の杵島は、
タイム・ライフ社による「1959 年度最優秀企業広告賞」の
受賞をきっかけに渡米し、この写真を撮影した。
アメリカに生まれ、日本で育ち、
特攻隊員として敗戦を経験した杵島にとって、
ニューヨークは単なる異国ではなく、
自身の出自、戦後日本、広告写真、リアリズム、
そして未来へのまなざしが交差する特別な場所。
この写真集でとりわけ印象的なのは、
子どもたちに向けられた視線である。
無邪気さの奥に、社会の変化がにじむ。
小さな表情の向こうに、
1960 年という時代の輪郭が浮かび上がる。
黒人と白人、女性と男性、若者と大人。
自由と平等へ向かおうとする都市の気配が、
子どもたちの表情や身ぶりのなかに刻まれている。
これは、ニューヨークの写真集であり、
戦後を生きた写真家のまなざしの記録であり、
そして、都市と人間の未来を見つめた一冊である。
分断と不安が渦巻くいま、
杵島が1960 年ニューヨークで見つめたものは、時代を超えて私たちに何を問いかけるのか。
「NYには、他の街にはない特別な魅力があり、ただ通りを歩くだけでも不思議な高揚感を覚えます。本書には、杵島隆が1960年の現地で感じた“heartbeat(鼓動)”が封じ込められています。では、その鼓動とはどのような光景であり、どのような意味を持つものなのか。
編集と執筆を進めるうちに、私は杵島が写したニューヨークの子供たちに、次第に目を奪われるようになりました。杵島は意識的に、あるいは無意識のうちに、子供たちへカメラを向けていたのではないか――そう思えてきたのです。本書を読み解くおもしろさは、そこにあると言っても過言ではありません。
国や時代が違っても、人の気持ちに本質的な違いはない。そのことを、1960年のニューヨークの子供たちが伝えてくれているように思います。(森岡督行)
『esquire JAPAN』で4pの特集が組まれ、
この写真集をきっかけに杵島隆の評価が再び高まっています。